山岳堪能クエンカ5〜天国に1番近づいた日〜

うるさかったチュンチを出発。

今日はこれまでで1番登る日。

道のりは60kmと短いものの,登りはなんと1800m。

 

出発した瞬間からもうずっと登り。

 

 

すぐにチュンチが遠くに。町の少し下に教会があったのね。

あの町が地図にくわしくのっていないとは,グーグルマップがんばってくれ。

 

仲のいい犬と猫。南米の犬はほとんど毛むくじゃら。

 

やっと下り,だけど数少ない写真に指が入ってしまった。

ここでは晴れているけど,高いところはいつも雨が降っている。

ここ最近,ぬれない日がない。

 

登りばっかりで景色の変化もなく,写真のとりどころがない。

40km走って今日初めての町に着いた時には14時近くになっていた。

天気は雨。

 

昼ごはんを食べてからも登り続け,なんとかエルタンボの看板までたどり着く。

 

 

その日の宿はどうしてか,怖いくらいに物音1つしなかった。

 

 

その日もピザ。いつもマルゲリータばっかりだったから,味を変えてハワイアン。飽きずに最後まで食べることができた。ピザ最高。

カロリーを消費しまくっているから,好きなだけ食べられるのが自転車旅の救いだね。

 

この記事のメインはこれからだから,この日のことはさらっと書いたけど,1日登り続けるっていうのはものすごくしんどい。だれかほめて。

 

 

次の日。

朝になっても周りが静かすぎて,今日も8時起き。

今日は70km走って,目的地である古都クエンカまで行く。

今日は下りの方が多い。

午前中に思いっきり800mぐらい登って,あとはしばらく下って,最後にまた少し登る。

 

エルタンボが標高3000mで,午前中3時間かけて3500mまで登った。

エクアドル3度目の3500m超え。当然雨がふっている。

頂上のガソリンスタンドでしばらく休むも,雨は止まない。仕方がないので出発。

 

下り始めると,自転車に異変に気づく。

 

 

ブレーキがきかない

 

この恐怖を味わったことがある人はそういないだろう。

 

実は少し前から,後ろのブレーキがほとんどきいていなかった。

調整してもうまくいかなくて,前だけで何とかしていたのだけど,頼みの綱の前ブレーキもまったくきかなくなっている。

焦って両方のブレーキを全力で握りこむが,まったく手ごたえがない。

 

 

重い荷物を積んだ自転車は,下りでスピードがつくと,簡単には止まれない。

さらに雨で路面がぬれている。

 

下りはそれほど急ではないけど,確実にスピードは上がっていく。

 

怖い

 

止まれない自転車は,ただひたすらに怖い。

体感で,時速50kmはこえている。

速さだけじゃない。いつに間にか雨が強くなっている。

雨粒が針となって顔を刺す。水滴がサングラスについて,視界がせまい。

 

 

死に方はいくらでも考えられた。

このまま転んで崖から落ちる。

転んだところを車にひかれる。

転んだしょうげきで全身を強く打つ。

 

 

多分,1番安全なのは,自分から転んで少しでも受け身をとることだろうけど,それも怖くてできない。

 

目をこらし,路面の段差や穴をかわしながら,なんとか進んでいく。

 

しかし問題はこれからだ。

今は山道だからいいけど,もし下りのまま町に入ってしまったら無事ではいられない。

バスやタクシーが停まる,人が道を渡る,道がせまくなる。

そこに50kmの自転車でつっこんだら,最悪死ぬのは自分だけじゃすまない。

 

日本のニュースで自分の訃報が伝えられる映像が脳裏に浮かぶ。

こんなところで,南米前半のエクアドルで,まだ終わりたくない!

 

最大の試練は,町に入る直前でやってきた。

赤い線のヘアピンカーブ。ここを時速50kmで曲がらなければならない。

このカーブを目の前にして,

 

「ああ,終わった」

 

自分の中で転ぶのは確定してしまった。

カーブに対してどれくらいのスピードなら安全か。

ふだんから自転車に乗る人ならだれでも持っている感覚。

軽くレッドゾーンを振り切っていた。

 

それでも自転車は止まらない。

雨にぬれた道路では,曲がろうとした瞬間にタイヤがスリップして倒れるだろう。

それでも今自分にできることは,曲がろうとすることだけだ。

 

カーブに突入。

きかないブレーキを握りしめながら,車体を傾けちゃいけないところまで傾ける。

0.1秒先に待っている落車の恐怖に,呼吸が乱れる。こわいこわいこわいこわい!

あまりのスピードに曲がりきれず,反対車線にまで大きくふくらむ。

ここでトラックやバスが来たら正面衝突。当然即死。

 

祈る間もなく現れた運命の対向車は,幸運にもバイクだった。

うまくよけてくれて,接触せずに通過。

 

ここまでスリップなし。

奇跡のコーナリングを成功させると,目前に短い登り坂があった(地図の青)

登りである程度スピードが落ちたところで,両足を地面にこすりつける足ブレーキ!

くつは少しすり減ったけど,ようやく止まることができた。

 

びしょ濡れて寒いのか,怖いのかわからないけど,体の震えが止まらない。

それに命びろいした安心感がまざり,しばらく立ち尽くしたまま,その場を動くことができなかった。

 

 

雨の中でもタイヤがスリップしなかったのは,重い荷物のおかげだ。

車体の重さによりタイヤのグリップ力が上がっているのだろう。

対向車がバイクだったのは本当にただの偶然。

 

あと一歩で天国行き,本当に紙一重だった。

 

ブレーキを調整すると,前だけはきくようになった。

下った先の町はビブリアン。ここはこの先,忘れることはないだろう。

 

その後は天気が回復し,道もゆるやかになった。

最後にまた一雨ふられたものの,無事にクエンカにたどり着くことができた。

 

世界遺産の町クエンカについては,次の記事でたっぷりしょうかいします。

 

皆さんも,自転車のブレーキだけは乗る前に確認するのをおすすめします。

 

あー,生きててよかった!

Amazon

サトウにメッセージを送る